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鳥取地方裁判所 昭和23年(行)16号 判決

原告 入江尚徳

被告 鳥取県農地委員会

一、主  文

被告が昭和二十三年六月二十二日別紙目録記載の土地についてなした訴願棄却裁決はこれを取消す。

鳥取県東伯郡三徳村農地委員会が同年四月九日右土地について樹立した買収計画はこれを取消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

二、事  実

原告訴訟代理人は主文同旨の判決を求めその請求の原因として、別紙目録記載の土地は昭和二十三年四月九日当時は原告の所有であつたところ、鳥取県東伯郡三徳村農地委員会は同日自作農創設特別措置法(以下自創法ということにする)第三十条第一項第三号により右土地につき未墾地買収計画を樹立したので、原告はこれを不服として同月十五日同委員会に異議申立をしたところ棄却されたので、更に原告は同年五月八日被告に訴願を提起したところその訴願も亦同年六月二十二日棄却せられその裁決は同年七月二日原告に通告せられた。しかし右土地は本件買収計画樹立当時畑として耕作中のものであつたが附近の未墾地と併せて開発するのを相当とするような事情は存在しなかつたから右買収計画は違法で、その買収計画を容認した本件訴願棄却裁決も亦違法である。よつてその各取消を求めるため本訴請求に及んだ旨述べ、被告の主張事実中本件土地の東北に被告主張の開発すべき未墾地が一団をなして隣接しており且つ本件土地の西南に坂本部落のある事実はこれを認めるがその余の事実を否認する。もし道路敷設の必要があれば原告はこれに応ずる意思があり、その意思は本件買収計画樹立以前に三徳村農地委員会に対し表示してあるから道路敷設のため本件土地を買収する必要はなく又原告は現に本件土地の耕作に精励しているから山林原野化のおそれもなくその他併せ開発を相当とする事情は全然存しないと述べた。(立証省略)

被告訴訟代理人は原告の請求はこれを棄却する。訴訟費用は原告の負担とする、との判決を求め、答弁として、別紙目録記載の土地が本件買収計画樹立の当時原告の所有であつた事実、原告主張の日に未墾地買収計画樹立、異議申立、その棄却決定、訴願の提起、訴願棄却裁決、その通告のあつた事実、同目録記載の土地の中(二)が農地(畑)であつた事実、右農地につき自創法第三十条第一項第三号により買収計画を樹てた事実はこれを認めるがその余の原告主張事実を否認する。未墾地が農地に変化する度合をパーセンテージを以つて現わせば買収計画当時において同目録記載(一)の土地は八十パーセント、同(三)の土地は九十パーセントであつて農地に近似しているが未だ農地ではなかつた。そこで同目録記載(一)(三)の各土地については同法第三十条第一項第一号により買収計画を樹立したのである(昭和二十三年十二月八日の口頭弁論において買収計画の当時右土地が農地であつた事実、右買収計画が同条第一項第三号によるものである事実を自白したがこの自白は真実に反し錯誤に基くからこれを取消す)仮に右(一)(三)の土地が農地の域に達していたとしてもそれは次の(い)乃至(に)に述べるように同条第一項第三号にいわゆる開発に供しようとする未墾地附近の農地であつて、当該未墾地と併せ開発するのを相当とする事情が存在していたから右買収計画は少くとも結果としては正当であつたといわねばならない。又右(二)の農地にも亦同様の事情が存在したからその買収計画も亦適法である。即ち本件土地の東北に開発すべき未墾地である同所四百二十二番、四百二十一番、四百八番、四百九番の一、二、四百二十番の一が一団をなして隣接しているところ、(い)本件土地の西南には坂本部落があるので本件土地を過り右部落と前敍未墾地とつなぐ道路を敷設する必要があり、(ろ)又本件土地は刈畑の性質上山林原野化し易いのでこれを防ぐため買収の必要があり、(は)更に附近一帯に区画整理を施行する必要もあり、(に)しかも本件土地はその全部を原告が独力で開墾したのでなくその過半は他人をして開墾せしめ、然る後原告においてこれを引取り自作しているものであるから買収にあたり原告の本件土地に対する執着心を特別に考慮する必要はない。よつて本件買収計画及びこれを容認した被告の訴願棄却裁決は適法でその取消を求める本訴請求は失当であると述べた。(立証省略)

三、理  由

別紙目録記載の土地が昭和二十三年四月九日当時において原告の所有であつた事実、鳥取県東伯郡三徳村農地委員会が同日右土地につき未墾地買収計画を樹立したので原告がこれを不服として同月十五日同委員会に異議申立をしたところ棄却せられたので、更に同年五月八日被告に訴願を提起したところその訴願も亦同年六月二十二日棄却せられその裁決が同年七月二日原告に通告せられた事実、別紙目録記載(二)の土地が本件買収計画樹立当時農地(畑)であつた事実、右農地に対する買収計画が自創法第三十条第一項第三号によるものであつた事実は当事者間に争いのないところである。而して各成立に争いのない甲第一号証、乙第四号証、証人中川静雄の証言の一部、原告本人の供述に本件口頭弁論の全趣旨を綜合すれば、同目録記載(一)(三)の土地はもと杉林であつたが原告において昭和二十一年中に開墾を終り翌二十二年以来原告において粟大豆等を栽培している畑で、即ち農地であつたので右両地に対する買収計画は自創法第三十条第一項第三号に則り樹立せられたものである事実を認めるに足り、右認定に反する証人山本一市の証言、同中川静雄の証言の一部は信用し難くその他右認定をくつがえすに足る何等の証拠もない。(従つて前記自白の取消は効力を生じない)

よつて別紙目録記載の各農地に対する本件買収計画が右規定の定める要件を具備しているかどうかを按ずるに、本件土地の東北に開墾すべき未墾地である鳥取県東伯郡三徳村大字坂本字上野四百二十二番、四百二十一番、四百八番、四百九番の一、二、四百二十番の一が一団をなして隣接している事実、本件土地の西南に坂本部落のある事実は当事者間に争いがない。被告はこの未墾地と同部落とをつなぐ道路を敷設する必要ある旨主張するけれども元来同法第三十条第一項第三号にいわゆる農地で併せ開発するのを相当とするものとは未墾地附近にある農地をそれと一括して開拓地とすることが適当な場合を指すもので、例えばいままで畑だつた農地を買収して附近の未墾地と一緒に田にするというように当該買収農地自体をも他種の農地に開発するを相当とする稀な場合に限られるものであると解すべく、従つて未墾地の便益のためにする道路敷設の必要があるとして右規定による買収をすることはできないといわねばならない、(もし道路敷設のために必要であるならば改めて同条同項第七号の規定により本件農地の内道路敷地として必要な範囲だけにつき買収計画を樹立し直すべきである。しかも本件農地の内に新道路を敷設する必要があるかどうかは地勢等諸般の事情に照し相当疑問である。)更に被告は本件土地は刈畑の性質上山林原野化するおそれあり又附近一帯に区画整理する必要ある旨主張するけれどもこれを認めるに足る証拠なく、又本件土地は原告が独力で開墾したのでない旨主張するけれどもこの事実は買収を正当とする積極的の理由とはならないから本件土地につき同条同項第三号に該当する事由の存在したことに関する被告の主張はいずれもこれを採用し難い。

そうすると本件買収計画は右規定に該当する事由がないのに右規定に基き樹立されたことに帰着するから失当であつて、従つて又これを認容した被告の訴願棄却裁決も失当であるといわねばならない。よつて右買収計画及び訴願棄却裁決の各取消を求める本訴請求は正当としてこれを認容すべきものとし訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条を適用し主文の通り判決した。

(裁判官 大賀遼作 大倉道由 柚木淳)

(目録省略)

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